黒岩の眼

エイチワン(5989)~16/8/8執筆

「右折時は歩行者に注意しなさい」――昔、教習所でこんなことを教えられた。理由は、右折時は対向車に気をひかれて、ついつい歩行者を見落としがちになるから。もう一つの理由は、車の内部から見ると、左よりも右のほうが、視界が悪いからである。なぜならば、邪魔な「フロントピラー」が存在しており、特に右側が見づらくなっているのである。

「フロントピラー」とは、車の前面ガラスの両サイドに付いているあの柱のことだ。右ハンドルの場合、運転者との距離が近い分だけ、どうしても視界を遮ってしまう。なので、右折のときは、「特に注意」というわけだ。

先日、エイチワンは、「3次元熱間曲げ角型鋼管によるフロントピラーを新開発」と発表した。長ったらしい名前で舌を噛みそうだが、要はこういうこと。「3次元」とは「立体的に」、「熱間曲げ」とは「高い温度で曲げる」ということ、「角型鋼管」とは、「断面図が四角いパイプ状の鉄」ということである。つまり、同社は、強度があって軽量なフロントピラーを、前述の画期的な方法で量産する技術を開発したということになる。なぜ、これがスゴイのかというと、最近では、衝突安全性や燃費向上の観点から、車ボディの強度化・軽量化が求められている。中が空洞である鋼管を特殊技術によって「焼き」を入れることによって、軽くて丈夫な車ボディの骨格部品が出来上がるというわけなのだ。視界を遮らない細くて丈夫なフロントピラーが完成すれば、それなりの需要が見込めるというわけである。

そして、この技術を使えば、フロントピラーだけに留まらず、他の部位にも応用が利くかもしれない。さらに、営業努力次第では、各自動車メーカーへの供給もあり得るだろう。エイチワンはホンダ系の会社なので、その販売先のほとんどがホンダ系。しかし、国内では大半の自動車メーカーと、多少なりとも付き合いがあり、場合によってはトヨタ・日産系への供給も可能かもしれない。「次世代のボディ骨格は炭素繊維」と言われる今、この炭素繊維が高価で実現性が乏しいうちに、「幕間つなぎ的」にシェアが伸びる可能性がある。あとは、轢かれても痛くも痒くもない車ができれば理想なのだが・・・。